2025年6月のコラム 「 EMO(エモ)について」
Tere!(テレ=エストニア語での一般的な挨拶)
yourmarks.inc コラムニスト、エストニア在住の菱田です。
前回は、エストニアのオンライン医療制度「e-Health」についてお伝えしましたが、今回は「EMO(エモ)」エストニアの緊急外来について、私自身の実体験を交えてお話したいと思います。
この出来事があったのは1年ほど前のこと。夕方、長女が遊んでいる最中に落下してしまい、左腕を強く打ってしまいました。本人はかなり痛がっており、ただの打撲ではないと直感的に感じた妻が、緊急外来に電話をかけて、すぐに最寄りのEMOを受診することになりました。
利用したのは、タルトゥ(Tartu)のEMO。通常、EMOは待ち時間が長いと言われているのですが、幸いこのときは夜間だったため、受付から診察までの待ち時間はほぼゼロでした。受付でIDカード(エストニア版マイナンバーカードのようなもの)を提示、診察手数料を支払った後、簡単な症状説明をして、すぐに診察室へ案内されました。
緊急外来室の待合室1
医師による問診と簡単な触診のあと、すぐにレントゲン室へ。撮影が終わって数分後には結果が出て、「やはり骨が折れている」との診断。運良く複雑骨折ではなかったため、入院や手術は必要なく、その場でギプスを作成してもらい、治療は完了でした。
緊急外来室の待合室2
費用については、妻と子供たちはエストニアの公営健康保険に加入しているため、基本的には無料(診療手数料などを除く)。夜間・休日診療にもかかわらず、高額な追加費用が発生しないのは、海外で暮らしている子育て家庭にとって非常に重要なポイントです。
緊急外来室 受付
その後、ギプス固定後4週間ほど経過したタイミングで、経過観察のために再び同じ病院を受診。このときは平日昼間の予約制での診察でしたが、混雑していた割には予想していたより待ち時間も少なく、レントゲンにより、順調に回復していることが確認されたため、受診後2週間ほどでギプスを外して大丈夫とのことでした。全体として、非常にスムーズだったのですが、日本の丁寧な医療制度に慣れ親しんでいた私にとっては、「え、骨折れてたのに次の受診は4週間後? それまでに骨ずれたらどうするの!? 経過観察後2週間ぐらいでギプス勝手に外していいの? え?」と、ずっともやもやしていました…
ちなみに、エストニアでは「EMO」はあくまで本当に緊急性の高い症状(骨折、意識の朦朧、呼吸困難など)に対応する場として位置づけられており、軽症や慢性疾患での利用は推奨されていません。受付時にも緊急性が認められない場合は、受診を拒否されてしまう可能性もあるみたいなので、受診前に、一度緊急外来に症状の説明をして判断を仰ぐのがよさそうです。状況によっては緊急外来ではなく家庭医への受診を勧められることもあります。今回のような時に、速やかに対応してもらえる体制が整っているのはとても心強かったです。
医療の質はもちろんですが、こういった「いざというときの対応」の確かさが、海外で暮らす私たちにとってどれだけ安心につながるかを、今回改めて実感しました。長女の骨折は大事に至らず、今では元気に遊び回っているのでご心配なく。
それではまた、
Nägemist!(ナゲミストゥ=エストニア語でのさようなら)
<追記>待合室に貼ってあった、家庭医か緊急外来のどちらかを受診するかの判断材料 (大人用と子供用) 緊急外来の不正利用は残念ながらエストニアでも一定数あるようです…